3月危機ってどんな危機?
株式市場やニュースなどで、3月危機、9月危機という言葉をよく耳にします。ほとんどの場合、「危機」は株価下落とその影響による金融システムの混乱を意味して使われています。
日本では企業の多くが9月末に中間決算を、3月末に本決算を迎えます(流通系の企業の場合は8月が中間決算、2月が本決算の場合が多いようです)。企業は期末に向け、決算の数字がどうなるかを予測しながら、決算対策を始めます。
例えば、本業で予想していた利益が出せそうにない場合、利益の出ている保有株式を売却して利益を出す、1年間の投資損益を確定するために海外の投資を手仕舞って、資金を日本に引上げるといった具合です。このような決算対策は決算の数ヵ月前から徐々に始まりますが、期末が近づくにつれ慌しくなってきます。上場企業にとっては、業績が株価に直接影響を与えるために、実際の決算の数字が既に公表している業績予想を大きく下回ることは避けたいと考えます。また、業績が株価に影響を与えるのとは反対に、期末の株価も企業の業績に大きな影響を与えます。これは時価会計が導入されたことにより、企業は資産と負債を毎期末の時価で評価し、評価益や評価損を計上しなければならないからです。本業で予想通りの利益が出ていても、保有資産の評価損が大きくなってしまえば、本業からの利益がふっとんでしまうこともあるわけです。そのため、企業は期末時点での株価を睨みながら神経質にならざるをえません。
中でも、銀行にとっては期末の株式相場は極めて重要であり、この株価の銀行業績への影響が、期末が近づくたびに3月危機や9月危機が囁かれる最大の理由になっています。
銀行は、国際的な銀行システムの安定性の向上と銀行間の競争条件の平等化を図るための国際統一基準(これをBIS基準と呼びます)を遵守することが求められています。この基準により、国際的に事業を行なっている銀行は資産に対する自己資本の比率(自己資本比率)を8%、国内だけで営業している銀行は4%以上に維持しなければなりません。しかし、株価が下落すると、この自己資本比率が低下します。海外で業務展開している銀行は、自己資本比率が8%を下回ってしまったら、海外における業務が出来なくなり、それでは銀行の存続さえ揺らぎかねないことになります。
加えて、株価が下落して株式評価損が膨らめば、不良債権処理による損失を吸収できなくなります。政府からは不良債権処理を急ぐことを求められているものの、景気低迷が続く中、銀行の抱える不良債権額は増加しています。にもかかわらず、株価が下落すれば、銀行はその不良債権を処理する余力がなくなってしまうわけです。株価水準次第で、処理できる不良債権額が大きく変わってきます。つまり、株式市場の下落、自己資本比率の低下、不良債権の増加、銀行の破綻、金融システム全体の混乱といった負の連鎖が期末に向けて3月危機や9月危機がささやかれる理由というわけです。
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