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監査法人のあり方

2001年12月に米国エネルギー大手のエンロンが、不正会計処理の発覚からわずか1ヵ月程度で破綻に至り、2002年6月下旬には、米国通信大手のワールドコムによる巨額の粉飾決算が発覚、同社も結局破綻の道を辿りました。不正会計疑惑はその後も続き、これが米国株式市場下落の大きな要因になったことは記憶に新しいことです。更に、今回、日本でも、りそなが公的資金投入を決定するに至った背景に、りそなの監査法人がりそな側が用意した決算を受け入れることが出来ずに監査人を辞任し、それによりりそなの財務健全性の問題が発覚したことがあります。

上場企業は決算期ごとに監査法人による会計監査を受けます。だからこそ、投資家は企業の公表する財務諸表等は正しいという前提で投資判断を行うことができます。そもそも会計監査とは企業の公表する財務諸表が、一般に認められた会計原則に準拠しており、企業の財政状態や経営状態を適正に表示しているか否かについて、公認会計士又は監査法人が評価を行い、その結果を財務諸表の利用者に対して報告するものです。つまり、監査法人による会計監査は、企業の財務諸表の社会的信頼性を保証する制度というわけです。その監査報告が虚偽あるいは粉飾されたものであったとなると、投資家の上場企業に対する信頼は崩壊してしまいます。財務諸表を信頼できないのであれば、投資家にとって株式投資はあまりにもリスクが大きいものになります。

日本では、証券取引法第百九十三条により証券取引所に上場されている有価証券の発行会社等が、証券取引法の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類は、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない、と定められています。万が一、公認会計士や監査法人が故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には、厳しく罰せられることになります。例えば、1998年に倒産した三田工業の粉飾決算事件では、経営者である社長と同社の会計監査人であった公認会計士に実刑判決が言い渡されました。また、旧長銀、旧日債銀、フットワークなどにおいても粉飾決算により会計士や経営者が逮捕されるに至っています。

この数年、企業が破綻してはじめて債務超過、簿外債務、不正会計が発覚するというケースが多く見られ、監査に対する信頼が大きく損なわれてきました。これを背景に、@不正発見の姿勢の強化、A継続企業の前提への対処、Bリスク・アプローチの徹底、C新たな会計基準等への対応、D監査報告書の充実を柱とした監査基準改訂が実施されました。その実施時期が平成15年3月期の決算監査から。まさに、りそなの監査法人が「ノー」と言った決算期からだったというわけです。

改訂監査基準のポイントは次の通りです。

@不正発見の姿勢の強化
職業的懐疑心の保持、不正が存在する可能性も踏まえた監査計画の策定、不正を発見した場合には追加的な監査の実施及び経営者等への報告を義務づけた。

A継続企業(ゴーイング・コンサーン)の前提への対処
債務超過、重要な債務の不履行、継続的な営業損失の発生等、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を抱かせる事象が存在する場合には、経営者がその内容や経営計画等を財務諸表注記により開示を行うこととし、監査人が適切な開示が行われているか否かを検討することを義務付けた。また、開示が適切に行われている場合においても、監査人は監査報告書においてその情報を追記し、投資者に情報提供を行うこととした。なお、継続企業の前提が成立しない場合には不適正意見を表明することとした。

Bリスク・アプローチの徹底
一定の決められた監査手続を実行していればよいという従来考え方を転換し、企業の事業環境や内部統制などに関するリスク評価を通じて、重点的に効果的かつ効率的な監査を行うという、リスク・アプローチによる監査の実施を徹底した。

C新たな会計基準等への対応
金融商品の時価評価など新たな会計基準の導入やIT(情報技術)を利用した新たな形態の取引等の発展を踏まえ、取引の実質に着目した適切な会計処理が行われているかの監査を求めることとした。

D監査報告書の充実
適正意見や不適正意見などの監査意見を表明する際の判断規準を示すとともに、監査報告書において、財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかについて監査を行ったことを明確にするなど、国際的な基準で求められている記述内容と同水準の内容の記述を求めることとした。

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