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- 相場を読みこなすためのテクニカル分析・入門 - 

Hポピュラーだが信頼度が低い移動平均線

移動平均線は、バー・チャート(ローソク足)に次いで利用する者の多いチャートであり、多くのプロも利用している技法である。個人的には、あまり評価しないテク ニカル分析であるが、よく知られた技法であり、省略することもできないので、簡単に説明した後、その欠点についても述べることとする。

移動平均線の功罪  

テクニカル分析といえば、移動平均線を思い浮かべるほど移動平均線はテクニカル分析の中ではポピュラーな技法である。この技法が広まったことでテクニカル分析がより広い社会的認知を獲得したといってもよい。しかし、そのことがかえってテクニ カル分析の普及を妨げたことも否めないだろう。

結論から述べると、恣意的・遅行性などの理由から移動平均線の信頼度は低いと考えるが、テクニカル分析の技法としてよく知られたものであることから、初級者は移動平均線を利用し、そのパフォーマンスの悪さに、それ以上テクニカル分析を勉強することを止めてしまうのである。移動平均線はとりたててすぐれたテクニカル分析技法ではないし、ましてや「移動平均線=テクニカル分析」ではない。誤解のないよう にされたい。

移動平均線の欠点などについては後述する。

移動平均線の歴史的展開  

日本でも戦前から絡み足と呼ばれるものがあり、米国が起源というよりも同時発生的であったのではないかという記述を読んだ記憶があるが、1930年代の日本でも移動平均足と呼ばれたり、米国式罫線と言われたりしていたというから、やはり米国 から伝わったもののようだ。ラリー・ウィリアムズによると、1920年代から研究 されていたという。先日、米国で1923年に出版された投機王リバモアの小説(『欲望と幻想の市場』)を訳していたら、工科系の大学院出の数学者が高度な平均化を行うチャートを開発したが、第1次世界大戦で大損して相場から手を引いたという記述があった。1910年代にはあったということになる。

日本に再紹介されたのは1960年のグランビルの著作(『グランビルの投資法則 』)によってである。

単純移動平均(Simple Moving Average)の作成  

最も一般的な移動平均線は単純移動平均である。一般に移動平均線といえば、この単純移動平均線を指す。得られた数値を平均期間の最後の日のところにプロットする。

具体的に言うと、例えば、3日移動平均線は、本日と前日と前々日のそれぞれの終値を足して3で割った数値を本日のところに記入するのである。

移動平均線の原理

移動平均線の使用目的は、価格の高下をミニマイズして、滑らかにし、価格動向を分析しやすくすることである。移動平均線は@一定期間の数値のみ計算する方法 、A一定期間に拘らず、過去の数値を無限に加えていく方法、に大別できる。

移動平均線の原理・見方について説明する。テクニカル分析でいう移動平均は、統計学でいう移動平均とは若干異なる。テクニカル分析の移動平均にあっては、その最後の日に移動平均の数値をプロットするが、統計学上では、これは平均をとった期間の真中の日の単純平均であり、あくまで移動平均の真中の日にプロットされるべきデータである(つまり、テクニカル分析の移動平均線は、統計学上の移動平均線を右端にずらして作成した恰好となる。統計学であれば、移動平均は、その応答日にプロットされるのが、正しい方法である。第1図参照)。日々線とテクニカル分析でいう移動平均線の乖離は、実の乖離と統計学の移動平均線をずらすことによってできる統計学上では認識 できない乖離とで構成される(第2図)。

移動平均を最終日にプロットする理由は何であろうか。一般的には以下のように説 明されることが多いようだ。移動平均を真中において、プロットした場合、平均の方向が変化したかどうかを確認するのに、n/2日からn日までn/2日間待つ必要がある(正確には(n−1)/2日間ずれる)。経済データの場合などは、その方法で、さほど問題ありとしないが、相場に関しては、それでは遅きに失するというのが1つめの理由である。2番めの理由は、テクニカル分析でいう「波動の原理」によって 、機械的に、判断に客観性をもたらすようにトレンドラインを作成することにあるという。

波動の原理とは、ある波動をずらしてプロットしたとすると、波動がある波動をク ロスして上昇すれば、その波動は暫く上昇を続け、クロスして下落すれば、その波動は下落を続けるというものである(第3図)。

個人的には、これらの原理はどうも説得的でないと思われる。特に波動の原理は移動平均を使うことの直接的な説明にはなっていない。グランビルも当初はクロスには注目せず、趨勢線としての作用しか期待していなかった。統計学の知識がなく、あるいは、たまたま移動平均線をずらしてプロットしてみたところ、偶然にクロスが利用できることに気がついたといったところではなかろうか。

 

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