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HOME > 林康史のMarket&Market > テクニカル分析・入門 > テクニカル分析への誤解に答える
- 相場を読みこなすためのテクニカル分析・入門 -Lテクニカル分析への誤解に答える 本コーナーの目的のひとつはテクニカル分析の技法を具体的に紹介することであった。三本抜き新値足などの価格構造(非時系列)チャートやストキャスティックスなどのオシレーター系チャートについて充分に記述することができなかったが、類書で補ってもらうこととして、ここではテクニカル分析に対する偏見・誤解について私なりの回答を与えることでまとめとしたい。 テクニカル分析の内容についての誤解 そもそもテクニカル分析に対して一般の人が抱いている概念が現実と違っていることがある。 最近、学会においてもテクニカル分析が実は有効だという研究がなされることが多くなっている。それは実際的な売買タイミングの測り方が難しいことから、現場ではファンダメンタルズに若干留意しながらもテクニカル分析に大きく依存して取引を行っているという現実を肯定したところから来ているものと思われる(特に近年、外国為替市場ではアノマリーが多いという指摘がある)が、個人的には、有効だとされる技法の選定に疑問があることが多い。 例えば、Stephen Taylorの論文 "Profitable currency futures trading : A comparison of technical and time series trading rules "(1990)では、フィルタ ー・ルール、チャネル・システム、2本の移動平均線システムという3つのテクニカル・トレーディング・ルールがよく知られており、有効であると説いている。 フィルター・ルールというのは、直近の天底からの反転がx%以上になった場合に、ポジションをひっくり返すというものである。米国ではサイラス・ハッチの10%ル ールとして100年以上も前に知られたものであり、日本でも『三猿金泉秘録』(1755年)に同じ発想が出てくるから、古典的といってもよいルールであろう。フィルターの大きさxは、一般的には0.5%〜10%の間であるとされるが、このように幅の広いレンジを是とするは意味がないに等しいし、だましにあう可能性も高い(別図)。
チャネル・システムは、ある特定の時間内において価格が一定のレンジの外に出たときを売買シグナルとするというのが一般的である。保合い(もちあい)から放れたこ とをトレンドが発生したと見なすのである。 2本の移動平均線のシステムとは、要するにゴールデンクロスとデッドクロスによる売買である(本コーナーの10、11回を参照)。 これについての私見は既に述べた。 結論の「テクニカル分析は有効である」はテクニカル・アナリストとしては喜ばしいのであるが、この3つがテクニカル分析を代表するかのような記述には首を傾げざるをえない。結果が良好だったからよかったものの、不良だったら、やっぱりテクニカル分析は駄目だということにもなってしまう。 テクニカル分析というと「移動平均」しか思い出さない人もいるようだが、既に述 べたように、移動平均はテクニカル分析の技法全体から見れば、ほんの一部にしかす ぎない。 テクニカル分析の領域・定義についての誤解 バートン・マルキールは『ウォール街のランダム・ウォーク』の中でスカート丈指数なるものを紹介して、テクニカル分析をけなしている。スカートが短い年は株式相場は強気で、スカートが長いと株式相場は弱気だというのである。私は、そんなくだらん話に付き合う気もないが(馬鹿話としては面白いが)、それをテクニカル分析だというのだけは止めてもらいたい。 よしんば、テクニカル・アナリストが、まじめにそう言ったとしても、それはテクニカル・アナリストとしての発言ではなく、コメディアンとしての発言(本人は自覚していないかもしれないが)なのである。 スカートに続けて、スーパー・ボール指数、オッド・ロッター理論(端株取引者の反対取引をすればよいという仮説)等々を紹介して揶揄している。 ごく限られた範囲の技法がテクニカル分析の全体ではないのと同様、何でもかんでもテクニカル分析だとして欲しくはない。テクニカル分析の定義については既に書いたが、価格と時間と出来高等が研究の対象であって、スカート丈ではないのはわかっていただけよう。 私見では、因果関係を追究するのはファンダメンタル分析の領域である。為替と金利差、経常収支はそれらしい。太陽黒点は…、占星術では…、どこまでが科学的でどこからが科学的でないのかは私には判断がつきかねるけれど、いずれも、私のいわんとするテクニカル分析ではないことは確かだ。 かつてニューヨーク・タイムズにニューヨークのストリップ・クラブの数と株価に相関があると載ったことがある。ホルモンの関係(アカゲザルのテストステロンと同じだそうである)があるらしくて、ストリップを見れば元気が回復して翌日には相場に臨めるというのだ。しかし、ホルモンの話が本当だとして、そもそもその男は、売りポジションで負けたのだろうか、買いに出て負けたのだろうか。いずれにせよ、因果関係があるというなら、それはファンダメンタル分析だ、といえば、ファンダメ ンタリストは怒るだろう。 マルキールのスカート丈には反論する気にもならない。そんなのを読んでテクニ カル分析は駄目だといわないでいただきたい。 私の知人にも駄目なファンダメンタリストはいるが、私は、だからファンダメンタル分析は駄目だとは思わない。中国の大学の金融工学研究所長に「サミュエルソンはテクニカル分析を認めていないがどう思うか」と聞かれたことがあった。たぶん、身近に優秀なテクニカル・アナリストがいなかったからでしょう、と答えた。 相場はランダム・ウォークか もう少し、マルキールへの反論を続けよう。テクニカル分析で儲かるなら、コメ ントなど流さないで自己資本でやればいいではないかという。ジム・ロジャーズならこういう。「給料日しか金と接点のない大学の教員に言われたくない」と。 ランダム・ウォークには、ウィーク型・セミストロング型・ストロング型があるが、要するに、不可知論の強度といったところだろうか。彼らの立場から言えば、不可知性の強さの順に、ランダム・ウォーク学派、ファンダメンタリスト、テクニカル・アナリストと並ぶのであろう(テクニカル・アナリストの立場から言えば、テクニ カル・アナリストの方がファンダメンタリストよりも不可知論者だということになる )。しかし、本当にまったくの不可知だというなら、相場に参加する根拠は何なのだろうか。そもそも、マルキールのいうバイ・アンド・ホールド戦略は、結果的には「上昇トレンド」を無批判に信じ、受け入れているということと同義である。 マルキールによると、テクニカル分析の欠点は@タイミングが遅れること、A信奉者が増えるにしたがって有効性が落ちること、B早期のシグナル獲得のために不確実性が増していくこと、だという。 しかし、多少のタイミングのずれは多少の得べかりし利益の減少をもたらすだけであり、予測が無効になるほど信奉者が増えることは考え難いし、テクニカル分析の教科書的 にいえば、確認してから相場に参入するのが基本である。第1、彼の主張自体が、第1番目と3番目が矛盾している。 ファンダメンタル分析 ファンダメンタル分析との関係については既に述べたので詳しくは書かないが、例えば、ウィリアム・グロースは「テクニカル分析派は占い師」だという。そういう表現をするなら、ファンダメンタル分析も同じだろう。 意外に思う人がいるかもしれないが、斯界における最高のエコノミストであり、テクニカル・アナリストであった故・本郷元秀氏は占星術にも精通していた。
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