『ギャンの相場理論』(編著)
日本経済新聞社 1996年
<書評>
ついに、ギャン理論を体系的に解説した本が出た。
今世紀初頭のアメリカの相場師ウィリアム・D・ギャンがブームになっているが、これまでギャン理論を体系的に記述した本はなく、その出版が待たれていた。テクニカル分析の確立という点で、有名なC・H・ダウやR・N・エリオット以上にギャンの仕事は決定的であったかもしれない。
彼の相場理論は時間の概念に立脚したものである。相場が価格の関数であるとともに、時間の関数であることを相場分析の視点に持ち込んだのはギャンが最初だという。時間の概念を導入することによって、科学的に相場予測の精度を向上させることが可能になったのである。彼を相場における時系列分析の祖と呼ぶことも可能であろう。
ギャンの成し遂げた仕事とはなんであったのだろうか。数秘術や占星術にまで及ぶギャン理論は、一般に、理解するのに困難だといわれる。しかし、優れた理論は部分に分けて記述することができる。また、その作業を経て全体が体系的に理解可能なものとなる。
本書は、第1部で、ギャンの相場観(相場の読みという意味ではなく、相場とは何かという哲学。チャートの意義等にも言及している)に触れた後、ギャンの理論構成の全体を俯瞰する。いわば導入である。
第2部では、ギャン理論はパーツである各予測手法に分けられ、詳細かつ具体的に解説が施されている。半値押し等の価格水準論やタイム・サイクル、アニバーサリー、相場の均衡、ギャン・アングル、ギャン・スクエア…。さらに、占星術(天体の運行)まで踏み込み、解説を行っている。ギャン理論という広大な対象を手際よく腑分けし整理しつつ、それらが有機的に結び付いていることが明瞭に提示されている。
第3部は、ギャンの運用ルールを解説。資金管理、逆指し値、難平、乗せ商い等、一般投資家にとっては、第3部だけでも読むべき価値はある。全体としてコンパクトにまとめられ、出色の出来映えである。
本書を手にして、われわれは初めてギャンの業績の全貌をみることができるようになった。 執筆陣は、日本テクニカル・アナリスト協会が翻訳した『W・D・ギャン著作集』T・U巻(いずれも日本経済新聞社刊)を担当したテクニカル・アナリストである。ギャン・ブームの仕掛け人といってもよい。とくに、編著者は九一年に『円・ドル相場の変動を読む』(東洋経済新報社)で書物として、おそらく日本で初めてギャンを紹介した。以前からの長年の研鎮の結果とはいえ、また若き彼らの成果は賞賛に値するものである。ギャン理論ばかりでなく、テクニカル分析においても貴重な本となっている。
(日本経済新聞社刊・A5判208ページ・2500円)
日本テクニカル・アナリスト協会会長(室清証券常務取締役)安見亙
(出所:金融財政事情 1996.9.16)
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