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『為替ディーラーの常識非常識』(監修)

中央経済社 1995年

編著 行間を語る 

先日、テレビ番組でタレントが「こんなに円高にして、米国は何がしたいのですかね」「昨日の円高は1日で3%以上の物価上昇と同じ」と述べていた。これは論外として、経済評論家と称する人やジャーナりストが「円相場にバフルが発生」「高等数学を駆使したデリバティブのせいで円高に」と言うのを聞くと耳を覆いたくなる。通貨の機能、相場のしくみを理解しての発言とは思えないのだ。

プロであるはずの為替ディーラーが「今回の円高はマルク高のせい」とコメントし、銀行のエコノミストが「円高のヘッジにマルクを買えばよい」と唱える。

よく言えば百花繚(りょう)乱、実のところ、ほとんど好き勝手を言っているようにも思える。相場、なかでも為替相場は分析や予測が困難な分だけ、いい加減な発言が横行しがちである。なかにはタメにする議論すら見受けられる。

それらを見破るためにも、地道な学習が必要なはずだ。通貨の基本を、相場の技術をきっちり習得していない人が多すぎると思う。

本書1冊で事が足るとは思わないが、基本は押さえたつもりである。第2部「外国為替相場の基礎知識」では、そのしくみを述べ、基本的な理解が得られるようにした。

しかし、本書は単なる入門書ではない。現場で奮闘するディーラーが日ごろ感じている理論や学説に対する疑問点にも触れ、ユニークな視点も提示した。円高が進む昨今、為替が経済に与える影響についてもまとめた。

第1部「為替ディーラー養成講座」は、相場に欠かせないと思われる視点、発想の勘どころを取りあげた。投機と投資、相場の鉄則、運についてギャンブルと相場の違い、直観について、ゼロサムの問題、デリバティブのリスク、ディーラーの社会的機能、ディーラーの向き不向き、心理的バイアス、場味など、ディーラーでなくとも気になる問題を取りあげてみた。一般の読者にも相場理解の一助となるはずである。執筆者間の意見の遣いもあったが、無理に意見を統一せず、違う見方もなるだけ載せる方針をとった。

内容は、現役の為替ディーラーを中心に17人で打ち合わせし、分担して執筆した。執筆者は、私の属する為替相場の研究会の面々で、昭和55年に社会人となった為替の仲間である。インターバンク・ディーラー、カスタマー・ディーラー、機関投資家、商社、メーカーの為替担当者、アナリスト……。執筆者の多様性から、機関投資家のスタイルやメーカーの意思決定プロセスなど、意外にこれまで書かれてこなかったものにも言及できたし、様々な角度から外国為替相場を描くことができたと思う。

彼らと意見交換をしながら、共同で仕事ができたことは私にとっても勉強になったし、楽しい作業だった。

「為替市場の真実、精髄」「相場を知る、為替を識(し)る」をコンセプトに置かれた本書が読者の役に立つならば、われわれの御恩おくりの目的も速成されることになる。

(出所:1995.6.2  日経金融新聞)


 

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