『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見』
☆『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見』の共訳者の望月衛氏の翻訳作業後の感想を記してもらった。 望月氏は、私の前の会社の同僚で、このジムの本以外にも、ジョン・パウロスの確率と投資のエッセイ(ダイヤモンド社から近刊予定)の翻訳を共同で作業したりしている、私の畏友の一人である。ちなみに、文中にも出てくるが、ジムが教鞭をとるコロンビア大学のMBAでもある。
Adventure Capitalist ジム・ロジャーズ について
(評者) 望月 衛
本書は1960年代にクウォンタム・ファンドをジョージ・ソロスとともに立ち上げ、その後ソロスと袂を分かって引退し、現在はコロンビア大学で教鞭をとると共にテレビの金融番組の司会、新聞・雑誌への投稿を行うジム・ロジャーズが、1998年末から2001年までミレニアム・トリップと称して行った世界旅行の紀行文、"Adventure Capitalist"の訳である。ロジャーズは1990年にも同様の旅行をバイクで行い、1994年にその模様を"Investment Biker"(『大投資家ジム・ロジャーズ世界を行く』)として出版している。今回は目もくらむような色のオフロード仕様、2人乗りのベンツ2台を使っている。同行するのはカメラ担当、ウェブサイト担当の2人、それに道中ロジャーズと結婚する女性の3人であり、この女性との結婚式にいたる過程は本書中盤のヤマ場になっている。
ジム・ロジャーズといえばファンダメンタルズ分析の教祖の一人であり、本書でも展開されている分析は基本に忠実であって、一見誰でもやっていそうなことに見える。しかし、彼の投資を他人よりも華々しく成功させているのは、おそらくそうした分析がインタネットや新聞といった2次的情報ではなく、あくまでも来訪者という形ではあるが自分の目で見た1次情報に基づくものであること、そして分析結果に基づいた投資行動を実際に取れることの2点である。本書でも、自分がよく知っているものにしか投資してはいけない、あるいは自分でよく理解するまで投資してはいけないとの自説を展開しているが、彼の要求する「理解」の水準は、おそらく通常の人々のそれよりも随分と高い。また、理論的な分析結果どおりの行動を取るという点については、投資の経験がある人ならば誰もが身をもって知っているように、わかっていてもなかなかできないものである。ロジャーズが本書で自分を異端と位置づけ、権威を疑ってかかれというのは、これらに基づくものであろう。
私(望月)はジム・ロジャーズが教えていた時期にコロンビア大学に在学していた。不幸にも、少人数に絞った彼の授業は取れなかったのだが、彼の授業のキビシさについてはその学期が始まった途端に学校中の話題となった。生徒はそれぞれ分析対象の企業を与えられ、どのような方法でもよいからその企業について情報を集め、分析し、彼の前でプレゼンテーションを行う。それが済むと、彼の厳しく、包括的にしてしかも詳細にわたる質問が矢のように飛んでくる。質問の嵐の最後に聞ける彼の常套句は「そんなんじゃオレの金は預けられないなぁ」だったそうな。ただし、ある企業の重役を授業に招いた回ではこうも言ったそうだ。「この講座の学生たちはウォール街のアナリストの80%よりも、あなたの会社についてよく知っている」。訓練の成果というべきだろう。首尾よく彼の講座を取れた友人は、とある世界的な運用会社のスターファンドマネージャーになった。
金融・投資関係の本としての、本書最大の山場は最終章にある。この章は旅行中ではなく旅行が終わってから母国アメリカについて考え直す章になっている。本書全体を通じてたびたび繰り返される官僚や官僚もどきの人たちへの強い批判は、もはや「異端」者の見解ではなく誰の目にも常識と映るだろうが、90年代を通じて金融業界ばかりかお茶の間のアイドルでさえあったアラン・グリーンスパンFed議長(私はデビッド・レタマンのトップテン・リストにグリンスパンの名前が出たのを目撃している)を他に類を見ないほど厳しく批判している。また、著者のような「大金持ちのアメリカ人、かつマスコミに登場する有名人」にはめずらしく、ブッシュ政権の軍事・外交政策をこき下ろしている。最終章ではないが中国の朱鎔基首相に対比させて、ブッシュの経済無知ぶりを嘆くところなどはある種の感動さえ覚えた。経済に限らず、ブッシュの知的水準の低さはもはや考えられないレベルで、彼がネオ・コンにハマったのはひとえにそれが彼が生まれて初めて脳みそを使う機会だったらからで、子供が言葉を教わるように、砂地にしみこむ水のごとくネオ・コン・ドクトリンを吸収したからだという説をこの前テレビでやっていた。納得できてしまうところが怖い。
本書におけるジム・ロジャーズの大局的な相場観は、「今後は当面商品市場中心の時代」である。著者の場合、当面とは数十年単位の長期である。つまり、ほぼ20年ぶりにインフレの時代がやってくるという読みであり、実際に数十年ぶりに運用業界にも復帰し、立ち上げたのは商品ファンドだ。彼の考えに同意できるかどうかは、自分の目で確かめることの難しい身には、本書を読んで納得できるか否かにかかっているだろう。
大投資家とともに世界旅行の冒険に!
経済もわかるギネス記録の大冒険記
(評者)
フリーアナウンサー
ファイナンシャルプランナー
中井 亜希
この本を手にして最初に思ったこと。冒険投資家って何? 世間には冒険家もいるし、投資家もいる。でも、その二つがくっついている人を私は聞いたことがない。そもそも、投資家はコンクリート張りのビルの中、世界情勢をコンピューターで睨み付けながら「売った、買った」と仕事をするイメージ(これもかなり偏ったイメージだが……)。一方、冒険家は自然を相手にロマンと限界に挑戦するイメージがある。両者は全く別のものと思っていたが、この本を読んで固定概念を持ってはいけないと実感した。もっとも、原題がベンチャー・キャピタリストなのをもじって『アドベンチャー・キャピタリスト』だということを後から知ったのですが……。それはそうと、第一回目の世界一周の紀行は『インベイトメント・バイカー』──第3弾は何をもじるのか。訳者のご苦労を考えると、楽しみというか少し心配……。
投資をする時、頼りにするものは人それぞれ。日足を分析してみたり、株主優待の有無を調べたり、はたまた占いやウワサを信じたりする人も。でも、あくまでも自分の利益獲得ばかりに目が行ってしまうのが共通項といえるかも。しかし、上がる株とはその企業が成長しているということ。その成長を支えるのは、そこでがんばっている人々である。この本は、市場を動かしているのは人であることを再確認させてくれる。
この本の主人公、冒険投資家のジム・ロジャーズ氏はイエール大学とオックスフォード大学を経てウォール街の世界に入った秀才。37歳には十分なお金を手に入れて、現役を引退している。全くもって、うらやましい限りである。それからの生活はといえば、優雅なゴルフ三昧な生活を送るのではなく、世界中を旅している。これが二度目の挑戦。
今回の旅では116カ国を3年かけて回っている。お供は、「目立つ」「世界中でサービスを受けられる」という理由で選んだ黄色いメルセデスベンツ。
その内容は、よくある旅行記のように食べ物やハプニングだけではない。実際に国々に行ったからこそわかる其の国に住む人々の表情や生活などを、その国の経済情勢と照らし合わせ投資家として評価する。机上で過去のデータを並べて分析し、もっともらしく説明するよりずっと説得力がある。
投資家として成功するために必要不可欠な性質は、「鋭く深い思索を重ねることができるかどうか」といわれるが、彼の二度の紀行を読めば、投資家として成功し続けた理由がわかる気がする。
そうした視点は、徹底的な調査と思索によってもたらされるのだろうが、彼の特徴は、実地調査のウエイトが際立って高いことだろう。地べたからの視座が彼の本領なのだ。旅でのスリル、面白さもさることながら、真骨頂は、彼の視点を共有しながら世界を巡ることにある。
ちなみに、日本にも訪れていて、もちろん評価もしているが、その内容はお読みになってご自分の眼でお確かめください!
また、投資家ならではともいえる「旅の楽しみ」も記されていた。私も是非やってみたいのは、上海証券所に行って日本では買えない中国株を記念に買うこと。普通の旅行者では思いもつかない思い出づくりですよね。
投資好きの人、世界情勢に興味がある人はもちろん、ガイドブックを片手に世界中の観光客と同じルートを歩くのが嫌になってきた旅行好きにも是非お勧めしたい一冊。きっと、いつもと違う旅行ができること、請け合いです。私もいくつか行きたい国ができました。もちろん、黄色いベンツに乗っては行けないと思いますが……。
中井 亜希さんのプロフィール:アメリカ・ニューヨーク出身。慶応大学法学部卒業後、大手都銀に入行。その後、NHKアナウンス部を経て、フリーアナウンサーに。『榊原・嶌のグローバルナビ』(BS-I・毎週土曜日午前8:30〜9:25)など、テレビ、ラジオで活躍中。「国連英検特A級」「ビジネス英検A級」「証券外務員」「ファイナンシャルプランナー」の資格をもつ。
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