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『生命保険会社の金融リスク管理戦略』(共著)

東洋経済新報社 2000年

『生命保険会社の金融リスク管理戦略』書評

生命保険各社の置かれている状況が厳しい。長引く低金利の環境下で、資産運用利回りが過去に保険契約者に保証した利回りを下回る、いわゆる逆ザヤが一向に改善せず、その穴埋めをするうちに、資本、各種準備金、含み益などからなる純資産が減少、いわば体力を消耗してきているという状況にある。昨年、6月には第百生命、9月には大正生命、10月には協栄生命と千代田生命、実に4社もの生保が破綻した。

本書は、このような状況を踏まえ、生保にとっての金融リスク管理がいかにあるべきかを考察したものであり、V部15章の構成となっている。

第T部は、ALMの金融リスクである。生保が他の金融機関と異なるリスク管理を必要とするのは、保険契約という長期・固定の負債を抱えているからであり、この長期・固定負債と運用資産を統合して分析することによって、保険契約の予定利率、契約者配当、運用資産の構成について、その望ましい水準などを導いている。

第U部は、資産の金融リスクである。ここでは、保険契約という負債を離れて、資産運用の観点からの考察を行い、資産配分手法、信用リスク管理手法の説明の他、日本や外国の株価の実証分析から得られたインプリケーションを示している。これらの内容は、生保のみならず、投資顧問会社などの資産運用担当者にとっても有益なものとなろう。

第V部の経営・組織の金融リスクでは、相互会社という企業形態のコーポレート・ガバナンスの観点からの分析や、管理のプロセス・内部牽制といった会社内部の態勢、広く金融リスクの認識における問題点が取り上げられている。併せて、生保版の預金保険といえる支払保証基金の拠出金の決め方や、ソルベンシー・マージン規制についても考察されている。

本書を読んで、評者が一番に感じたのは、保険契約という負債のデュレーションを把握するのが重要な課題で、その上で運用資産のデュレーションを負債のデュレーションに近づけていくべきではないかということである。また、保険契約の利回り保証と相互会社という組織の両立は困難ではないかとも感じた。本来、死亡・生存という生命保険のリスクを契約者全員で相互扶助するという理念で作られている相互会社が、資産運用のリスクまで負担していることに、無理があるのかもしれない。この契約利回り保証という、いわばオプション・リスクは株式会社化によって株主に負担させるか、相互会社のまま利回り保証をなくして、契約類型別の勘定を設け、その分別勘定毎に運用の成果をプラスの場合もマイナスの場合も契約者に還元させるのが望ましいと考えるがいかがだろうか。

読み手の立場によって得られる示唆も異なるだろうが、本書を通じて、生保のリスク管理手法や経営・組織に関するさまざまな示唆を得ることができることは間違いない。生保の幹部、資産運用や企画の担当者は必読であろう。また、生保に資産運用を委託している年金基金の関係者、生保と同様の長期の資産運用を行っている投資顧問会社の関係者にも一読してもらいたい一冊である。

(評者 大和証券SBキャピタル・マーケッツ リスクマネジメント部 次長 小野 覚 )


 

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