『国際投資へのパスポート モビアスの84のルール』
(マーク・モビアス著。共訳)
日本経済新聞社 2001年
<訳書 行間を語る>
「なぜ『国際投資』という単語をタイトルに用いたの?せっかく内容はいいのに、読者が手に取らない」 ― 。ある出版社の編集担当の感想である。なるほどと思うとともに、わが国の投資家のレベルはいまだその程度なのかと愕然(がくぜん)とし、寂しく感じたものである。国の将来を考えるとき、私たちは今こそ海外投資を行うべきなのではなかろうか。国際投資も投資であるから、本書に述べられた投資の鉄則(84のルール)は、国内投資しか考えない人にも非常に参考になるはずである。
本書は、まさに投資の実践書である。半ば旅行記の体裁をとりながら、現地の会社を訪問し、経営陣とひざを交えて議論する。当然でもあろう。本当にもうけようとするなら現場主義しか手はないのである。「経営は、投資は、会議室で起きているのではない、現場で起きている」からだ。そうした投資判断形成の過程を記述しつつ、ルールという明確で印象的な形で読者に知恵と教訓が提示される。
ルールの一部を紹介しよう。「人々が悪いと思う株が通常よい株である」「トンネルの終わりに光が見えてから買うのでは遅すぎる」 ― 彼が割安のものしか買わないバリュー・インベスターであることがわかるが、ニューエコノミーと情報技術(IT)のユーフォリアの最中にあって、彼は、割高なものは買わないという主義を貫いていた。
バーゲンハンティングを突き詰めると、世界中に目を向けざるをえないのは当然だ。他にも「かつて厳しく規制されていて、今規制緩和されつつある業種をウォッチすること」等々、至言にあふれた本である。
ルールの最後はこうだ。「不確実な状況が明確になって、誰でも物事の結果をある程度正確に予測できるようになった途端、株価は上昇して、おいしいもうけのチャンスは煙のように消えてしまっている」。暴落こそチャンスなのである。
本書は、本当の価値とは何か、どうすればそれを認識できるのかという、投資の際に必要な根本的な思索と視座を与えてくれる。今こそ読むべき本だろう。
(出所:日経金融新聞 2001年1月17日)
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