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『相場としての外国為替』

東洋経済新報社 1993年

自著 行間を語る 

「ここまで仕組みを詳細に書かれると仕事がやりにくくなる」という感想を外銀に勤める先輩ディーラーにいただいた。本書の狙いのひとつは、真に実践に使える為替の本を書くことであったが、そう言えば、コストセーブのページなどは従来の本にはほとんど載っていない。銀行勤めでないからこそ書けた実践的部分もあるだろう。

単なる知識では意味がない。実務に生かすことのできる情報が詰まった本が欲しいと永らく思ってきた。そして、自分のため後輩のため書いたのが本書というわけだ。

あるガス会社の広告文案に「おふろ好きのこどもはサッカーがうまいという街のウワサがあります」というのがあった。少年は、よく食べ、よく眠り、よく運働し、したがって、ふろが好きで、サッカーもうまいのだそうだ。このコピーを本当のことだと思う人はそうはいまい。ただ、そういうウワサがある街があるという可能性は否定もできない。まして、学者やマスコミがそうだと言うと、真実だと錯覚する向きも出てくるかもしれない。繰り返し聞かされると、いっそうそう思うようになる。

相場に関する理論の中にも、この種の話は多いように思う。  

単純に因果関係を一対一対応で説明しようとする。金利と石油価格だけで外国為替相場が説明できるという学者がいたりする。経済理論や相場に関する理論は一定の経済基盤に基づいて成立するものであり、いつでもどこでも適用できるということはなく、普遍的絶対的真理かどうかは意外にあやしいのである。相場における定石はいったんは疑われるぺきかもしれない。

私は相場の理論の多くが「マーフィーの法則」ではないかと考える。マーフィーの法則とは、本当かなと思わせる一方、実はそうではないかもしれない、そういうセオリーめいたものをいう。外国為替相場の変動要因としての金利説など、そうした例は枚挙にいとまがない。たとえば、増税が外国為替に与える影響などもそうだ。本来的には財政の立て直しをはかる国の通貨が売られるはずはないのだが、景気回復への悪影響を考えると当該通貨の売りとなる。時期によって、材料の見方は変わってしまう。

あるいは、単純でないことを理由に「相場は生き物だ」などという言葉を半ば本気にしている人もいる。これも私には間違った態度に思われる。  

マーケットのしくみを記した上で、第3部にはそうしたことを述べた。結局、私のマーケット観(相場観という意味ではなくマーケットとは何かという概念)の覚書という格好になってしまったが、外国為替相場を考えるには、いわば「複眼」が必要だとした前著(『円・ドル相場の変動を読む』)の続編とも言える。

また、本書の特徴のひとつは、テクニカル分析のハンドブック(第2部)となっている点である。これは、外国為替相場に限らず、あらゆる相場に有効であると思う。

付録やコラムで、外為ディーラーを疑似体験できるディーリング・ゲーム、相場と確率論などにも触れたが、自分でも楽しんで書けた。

(出典:1993.5.10 日経金融新聞)


 

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